山ぶどうの篭は編んだのちに日増しに色合いが変化していきます。篭の醸し出す雰囲気は他の篭では味わうことができないほど です。篭の完成までは幾多の手数がかかりますがその成果が報われます。この山ぶどうの篭が出来上がる工程を2021年「蔓採取体験とひごつくりとかご編み」参加者の皆様と一緒にやっていきます。蔓採取は2021年6月27日。ひごつくりとかご編みは2022年の1月となります。
山ぶどう蔓の採取期間は春若芽が出る時期から初夏の若葉が生い茂る時期が採取時期です。この時期を逃すと あと一年を待つことになります。山ぶどうは里地の山ではあまり見かけることがなく奥山が採取地となります。おおよそ6月初旬頃から7月初旬頃が蔓採取となります。
「蔓採取体験とひごつくりとかご編み」参加者が採取地にむかいます。この時期は梅雨の時期で蒸し暑く山での採取環境はあまりよくありません。 特に虫刺されには困ります。参加者は虫よけ対策をしての山歩きですが想像以上に大変な作業ですよ!
採取現場での採取予定の蔓です。蔓の樹齢により太さが違い太いものほど樹皮の厚みあり若い樹齢の蔓ほど樹皮が薄くなります。程良い太さは大人の手首ぐらいがよく高い木に巻き付いているものほど良い樹皮が採取できます、山ぶどうの蔓は30mほど伸びます。山ぶどうは他の蔓とは違い蔓本体が寄生木に巻き付くのではなく巻きひごを巻き付けていきます。この巻きひごはとても強く沢山の巻きひごで蔓本体を支えています。
蔓採取を始めたころはどのようにして蔓を採取したらよいのかわからずに試行錯誤して現在の高枝のこぎり利用となりました。蔓は切れると急激に落ちてきます。どの方向におちるか見当をつけての採取です。蔓と一緒に枯れ枝が落ちてくることもあり危険な作業です。怪力と経験が必要な蔓切り作業です。
採取した蔓を観察します
蔓はまっすぐ伸びた素性の良い物でした、蔓の太さ4~6cm長さ10Mぐらいの蔓の重さは15kgほどあります。これから樹皮を剥いでの樹皮の重さは2kgとなり乾燥させると樹皮は45~50%ぐらいの重さになり1kgとなります。1本の蔓材からは1kgの原型品となります
・・・玉切り・・・2021.6
採取した蔓を適当な長さに切る玉切り作業です。切る位置や長さなどもひごつくりやかご編みを経験することで理解できるようになります。素性の良い樹皮はおおよそ2.5mぐらいで切断します。その他は1.5mで玉切りをします
樹皮に付着している鬼皮、外皮を剥ぎます
山ぶどうの皮を剥ぎます
山ぶどうの皮を剥ぎます
剥いだ皮を丸めます
採取した皮を丸める作業
参加者全員の採取した皮を丸めました
かご編みを始めます
2022,1 樹皮を水に浸ける 早いもので蔓採取から半年が過ぎて採取した蔓材でのかご編み講習の時期にきました。先に採取し乾燥小屋で乾燥させていた樹皮を水に浸けます。水に浸けるのは樹皮を柔らかくしてひごつくりをしやすくすることや樹皮を洗ったりなめし作業を行うためです。水に浸ける時間は8時間以上2日間ぐらいが目安です、水に浸ける時間が長いと樹皮が黒ずんだりするのでよくないという記事を見たことがありますがそのようになったことはありません、それよりも短いと含水率が低くひごが切れにくいことがあります。(詳しくはひごつくり教室で説明しています} |
2022,1 樹皮を洗いなめし作業を行います 近所に開拓民として奥山に入った方がおります。その方はご両親があいこ(ミヤマイラクサ)で浴衣などをつくって着ていたりやまぶどうで農作業道具をつくっていたという経験をお持ちです。その方がひご切り作業を見て「”山ぶどうを洗ったか”」と言ったのです。昔の人は作業用に利用した「やまぶどう」を洗って利用していました。この洗う作業には「なめし」作業も入っていたものと思います。山ぶどうを洗うことは表面を綺麗にすることばかりではなく樹皮に粘り(強度や耐久性)を出させる意味もあったのでしょう。 <余談>・・・あいこで思い出しました・・・東日本大震災の年の秋ごろに男の方が店に訪ねて見えられました。気仙地方に用事があってその帰りがてら寄って見たと言います。震災で被災した家屋の解体などででる木材(黒檀)を求めてきたようです。その黒檀は民族楽器に利用されていてその楽器を製作している方でした。楽器はアイヌ民族伝統の「トンポリ」という楽器です。その楽器の弦に「あいこ」が利用されているのです。そのあいこを販売していたので見に来たのです、あいこは当地方では玄人好みの山菜で道の駅などで販売されています。とげがあり気を付けて採取する山菜です。あいこを一通り見た後にケースを車から出すと自製作の民族楽器「トンポリ」を出しました。沖縄の「三弦(さんげんというんだっかたな)」に似ていました。そこで音色をおねだりすると弾き語りをしていただいたのです。幽玄で繊細な音色、自然の大地に息づくアイヌの人々の生活ぶりを想像させるような響きでした。・・・あれからずいぶん経ちましたが今でもあの音色が忘れられません・・・ |
2022,1 樹皮のなめし道具のなめし丸 樹皮の洗う作業やなめし作業は山ぶどう編みの中では地味な作業でひごつくりと同じぐらいの時間がかかります。なめし作業の意義が理解できなければおろそかになりがちな工程でつい手抜きになります。そんなことのないようになめし作業ができるよう「なめし丸」を製作しました。竹は山ぶどう樹皮と相性がとっても良くなめした後の樹皮は見違えるような樹皮なります。まるで「皮と革の違い」です。その違いが実感できるようになりましたらなめしの意義が理解できると思います |
2022,1 ひご切り道具のはば太郎 なめし作業を終えるとひご切りに入ります。山ぶどうのかご編みを始めた当初はハサミを利用してのひご切りでした。なかなか一定幅に切ることが出来ずに他の方々がどのようにしてひご切りをしているのかをネットなどで調べましたが明確な答を得ることができませんでした、試行錯誤しているうちに自由に幅切りのできる「はば太郎」という道具にいきつきました。シンプルな構造ですがなかなかの優れものです。いまでは多くの人に愛用されている幅切り道具となりました。・・・本当に優れものです。一度利用すると他の方法でのひごきりはできなくなりました、・・・ |
2022,1ひごつくり はば太郎を用いてひご切りを行います。ひご幅で最も作業性が良いのは6~8㎜サイズが切りやすく細い幅の3~4mmは山ぶどう樹皮の特長から節や曲がり割れ等によって制限され採寸がしにくい幅です。また長いひご1,5m~も採りにくいために長いひごが採寸できそうな樹皮が出た場合には長さを優先してのひごの採寸となります。ひごの良しあしはひご切りの技術より樹皮の良しあしで決まります。良い樹皮は少なくひごつくりに苦労します。 |
2022,1 編み込み作業準備 ひご切りを終えるといよいよかご編みに入ります。かご編みには型枠、作業版などを用います、特に型枠は熟練した職人さんでも利用する篭編みの重要アイテムです。ちいくろ工房の型枠は各種取り揃えていますが特長は上の方がやや狭くなっている型枠となっています。初めての編み込む方の多くは編み込んでいくうちにだんだん上に行くにしたがって広がる傾向にあります。完成した篭は口が広い「じょうご型(ラッパ形状)」となり締まりのない篭バッグに見えてしまいます。そのようなことを防ぐために上に行くに従いやや狭いテーパー状になっています。上に行くに従い口が広がるのを自然に防ぐ形状です、また寸法もある一定のルールに沿った型枠寸法となっていますので完成品は整ったバランスの良いデザインに見えます。・・・自分好みの大きさの「型枠」は重要アイテムです。・・・ |
2022,1 作業板に縦ひごを編み込みします ちいくろ工房では各地でかご編み講習を開催しています、講習日程は2日間ですが蔓採取後の今回のかご編みも2日間で編み込む日程となっています。短期間で編む込むには工夫が必要です、編み技法、手順、ひごの準備などですが特に道具は欠かせません。「作業版」は底編みをするときに利用します。型枠の底の大きさを養生テープを張って型どりし左右上下の中心線を引きその中に整列していきます。縦ひごを2つ折りにして上下左右の中央線(中心線)に合わせてひご固定ストッパーに挿しこんで編む込みます、山ぶどうひごは乾くと全体が元の形に戻ろうとする力(復元力)が強くひご全体が縮小します。そのことを考慮して全体を力強く押し込みながら編む込むことが必要です。この元に戻ろうとする力が他の自然素材物質より強いのがやまぶどうの最大の特長で上手に利用することが求められます。この復元力をそいで削ったり押しつぶしたりして塑性状態にするひごつくりもあります。このようなひごを利用すると隙間なくきれいに編み込むことができます、篭も綺麗ですが自然素材本来の味わいが少なく篭の表情が山ぶどうの生命力をそいで寂しく見えてしまうのです。 |
2022,1 底の編み込み 作業板に縦ひごを長いひご(L)から配置し短いひご(S)で編み込んでいきます、短いひごを基準にすることもできますが長いひごで編み込むと間違いが多くなりやすく長いひごに短いひごで編み込む方を標準としています。L、Sとも両端の縦ひごには特にしっかりとしたひごを選んで使います。この両端のひごは篭のコーナーになる場所です。作業版に型枠の底を型どりした枠内に収まるように整列します。2目網代で編み込んでいます。画像のピンはひごが暴れたりしないように両端しっかりと止めて行きます。編み込む工程でこのような作業は面倒な煩わしい作業のようですが一つ一つの工程をきっちりとしていくことが後戻りすることなくきれいに仕上げるコツのようなものです。作業板は板なのでピンを打つにも便利です。 |
2022,1 底の編み込み終了です 底編みを終了しました。ピンを抜いて要所、要所をバインドで縛ります。その後ひご固定ストッパーのねじを緩めて底編みを外します。山ぶどうの樹皮からひごづくり作業中にこの樹皮からあのような篭ができるとは想像ができないのです。でも1本1本を編み込んでいくとこんなにもきれいな編み目になっていくので嬉しく楽しくなっていきます。縦ひごの総本数を数えて編みこみ模様ができるかを確認します。 |
2022,1 型枠に編み込んだ底部分をかぶせます 型枠を逆さにして底部分を出して、編み込んだ底部分をかぶせます。ひごには表、裏とがありますので再度確認の上表の部分を表面に出してかぶせます。 |
2022,1 底に当て板を取り付けます かぶせたひごが動かないように当て板をピンで取り付けます |
2022,1 底に当て板を取り付け終了です |
2022,1 横編みに入ります まずスタート地点をきめて縦ひごにマーク(目印)を付けて編みはじめます、1周したところで編み手順を間違えていないかどうかを確認し2週目に入ります。網代編みは「追っかけ編み」とか呼んでいたような気がしますが2週目のところで編み目が1周目の次の編み目になっていることが必要です。その周ごとに確認をしましょう、また山ぶどうの性質である元の形に戻ろうとする力(復元力)を考慮して下に押し付けたり引っ張ったりしてできるだけきつく締める感じで編みこむことも必要です。早く編むことではなく丁寧に編むようにします。 |
2022,1横編み中です 型枠に目盛り線を引いて編み込み途中で高さが均一にできているかを確認します。平行でなかったり波状になっていた場合には修正しながら編み込むようにします。ひごの継ぎ足しの場合にはひご同士の両端を削り継いだところが厚くなったりしないように注意します、このように削ったり挿しこんだり編み込み道具はとても有能な働きをします。 |
2022,1 横編み終了しました 右上がり階段状の模様がきれいに見えています。ここまでくると篭が出来上がったように見えてきます。 |
2022,1 縄編みを行います 縄編みは縦ひごを緊結しデザインやかごの強度上でも大事なところです。次の作業の縁かがりの編み模様などから縦ひご減らす作業もこの縄編みの大事な作業となります。通常は2段(2周)ほど巻きます、ひごの状態は幅が狭く(4~5mm)薄めの柔らかいひごの方が作業はしやすいでしょう |
2022,1縁芯を取り付けます その一 縁芯取り付けも大事な作業です。ひごは比較的厚い丈夫な反りや曲がり、節穴などの少ないひごを準備します。(ひごつくりの時に選別しておくといいでしょう)縁芯に曲がりや反りがあると縁を仕上げてから縁周りが波を打っているように見たりします。縁芯材としてはできるだけ1本の長いひごを使います。内側、外側と2本のひごを使う場合もありますが縁周りが緩んでしまうことがあります。ピンやバインド線を利用して固定しながら作業します |
2022,1縁芯の取り付け2 口が広がって見える漏斗状(ラッパ状)になることを防ぐために型枠のコーナーを利用して縁芯材を力強く引っ張り縁を締めることも必要です。(この縁芯の取り付けコツは講習の時に教わって下さい・・・講習などではこのような編み方のコツを教われるいい機会です)・・・「篭編み教室」へもどうぞ・・・ |
2022,1 底の当て板を外します |
2022,1 型枠を外します |
2022,縦芯を縁芯に添って折り曲げます |
2022,1 縁かがりをします 最初と最後の始末がわかりにくいです。画像でも表現しにくいところでマニュアルにはイラストで説明していますが十分ではありません。 何かわかりやすい表現、表示が出来たらと思うのですが・・・ |
2022,1持ち手の位置と高さなどを「ハウス」で確認します 縁かがりを終ええて持ち手の取り付けに入ります。持ち手の幅や高さを決める道具(ハウス)を利用します、持ち手の位置は型枠に印をつけておきハウスでは高さ決めをします。持ち手の高さを両側同じ高さにするには従来はメジャーなどを利用していましたが高さが不揃いになることがあります。この道具「ハウス」を利用することで高さや位置決めを正確に行うことができます。 |
2022,1持ち手を編み込みます 持ち手編み技法はいろいろあります、 |
2022,1完成です 予定の日程fで完成することが出来ました。 |